中小企業にとって資金繰りは最も大きな問題です。慢性的な資金不足や業績不振が続くことで銀行からも追加借り入れができないといった状態に陥ってしまった場合、支払いや返済の優先順位を正しく見極めることで、いざという時の危機的状況に対処することが可能となります。
資金繰りが悪い時には何をすればいい?
資金繰りがギリギリの状態になった場合、多くの会社はまず銀行への元金返済を行いがちです。これは資金繰りの悪い会社にとって、銀行から資金を借り続けている状態なので、返済が滞ってしまうと銀行から借入をすることができなくなってしまうことを恐れ、優先的に借入返済をしてしまう会社が多いことが関係しています。
しかし、資金繰りがギリギリになった段階で会社が行うべき対処は、元金返済を全額ストップすることや、少なくしてもらうといった銀行へのリ・スケージュールをお願いすることにあります。
多くの経営者は銀行との付き合いを考え、返済をするために親類縁者や知り合いからなんとしてもお金を調達しようとします。しかし、すでにどの銀行からも一切借りることができない状態担ってしまった場合、銀行への対面を気にしている場面ではありません。そのため経営者がまず行うことは銀行に返済期限を延ばして欲しいことを交渉することであり、できれば返済の減額ではなく一時的な元金の全額返済ストップをお願いするようにしましょう。
なぜ返済期限延長の交渉が必要なの?
これは資金繰りがうまくいかない会社の場合、交渉によって多少の返済減額をしてもらったとしても、すぐに資金が底をついてしまう可能性が高いためです。その後は他に借入している銀行があれば、全行交渉をしていけば約1~2年の返済猶予を得ることができるので、その間にしっかりと会社を立て直し、あらためて返済を進めていくことができます。
交渉のデメリットは?
ただし銀行へのリ・スケジュールはれっきとした契約違反であり、銀行からの信頼を失ってしまう行為のため、新しく借入が行えるようになるまでには時間がかかることを理解しておく必要があります。しかし返済猶予期間を利用して再建計画をしっかり立てれば、現在の経営危機を脱するチャンスは十分にあるので、銀行側も会社が倒産されてしまうリスクを避けるためにも交渉をしてくれる可能性は十分にあります。
支払いや返済の優先順位は?
では実際に資金不足が続いている中で、支払いや返済の優先順位は手形、給与、銀行への金利、税金や社会保険、元金返済の順番となります。
①手形の支払い
一番最初に優先しなければいけないのが「手形の支払い」であり、1回目の不渡りから6ヶ月以内にもう一度同じ状況になってしまった場合、銀行取引低処分になり、事実上倒産してしまいます。手形の支払いは不足が許されないため、もし不足する見込みになってしまった場合は手形を長期の分割にしてもらう、ジャンプしてもらうなど取引先に対してお願いをする必要があります。
②社員への給与
次に優先すべきなのが「社員への給与」であり、会社にとって社員は宝であり重要な技術や経験を持つ社員に対し、きちんと給料日に給与が支払われない状況が続いてしまうと、会社に見切りをつけて他の会社に行ってしまうリスクがあります。社員がいなくなってしまえば、せっかく再建計画を立てたとしても会社を完全に回復させることは難しくなるため、支払いの優先順位として社員の給与支払いは高くなります。
しかし、資金繰りの問題で給料日に給与を全額支払えない状態になってしまった場合、給与の10~30%だけを一時的に待ってもらえないかお願いする必要があります。社員の生活を守るためにも速やかにお金を作り、滞っている給与を支払うことが求められます。
③銀行への金利
次に支払うのが「銀行への金利」で、銀行返済の元金は速やかに留める交渉を銀行側とする必要があります。ただ元金の返済を止めてもらった場合でも、金利自体は支払いを続けることが一般的です。この金利の支払いまで滞ってしまえば、各付分類は大幅に下がる原因となるため金利は全額ストップではなく、一部だけでも猶予してもらえないかお願いをしましょう。
④税金・社会保険料
「税金・社会保険料」に関しては、消費税や源泉所得税といった滞納総額が1,000万円までなら交渉が行える場合が多いです。ただし差し押さえなどの強硬手段も考えられるため、納付期限まで全額支払うことが難しい場合には、税務署に相談をし滞納税金の分割払いが可能か確認をすることが大切です。差し押さえの対象は国税をはじめ、社員の給与天引きしている住民税、社会保険料や固定資産税も含まれるので、会社でどの税金の支払いが滞っているのか正確に把握し、事前に税務署や県税事務所、市区町村に相談をすることが大切です。
⑤元金返済
支払い・返済の優先順位で最後となるのが「銀行への元金返済」であり、最初に交渉することで1~2年の元本据え置きは可能なので、誠意を持って対応をするようにしましょう。