このブログでは、あらゆる角度から、「資金繰りの際は決算書をどのようなポイントで見ているか?」「について深堀しています。いくつかのパターンから、今回は「決算書の複数期比較」について、「なぜ重視されるのか?」といった観点からお話していきます!
会社が融資の相談をする場合には、いろんなパターンがあります。経営難の可能性もありますが、必ずしもそのような理由ばかりではありません。例えば積極的な投資を見据えての資金繰りが一例で、これから設備投資をして会社の利益を伸ばしていくパターンも考えられるわけです。あるいは支店などを作っていくためにお金が必要になるケースもあるかもしれません。このように会社がお金を借り入れるパターンと言うのは、経営的に問題がありお金を借りなければやっていけない場合と、これから規模を拡大する場合の2種類が考えられるわけです。もちろん現状維持で借り入れをする場合もあるかもしれませんが、大抵の場合最初の2つのどちらかになります。
借入先の金融機関である銀行や信用金庫などでも、最近はカードローンなどの商品も取り揃えていますが、カードローン等の制度を利用するような会社はほぼありません。定期返済する融資を実施することになるわけですが、このときの借り入れ額もそれなりに大きくなりますので、担当者が直接決算書等を見て判断することになります。つまり借入額が大きいのであれば、お金を貸す側の金融機関も、当然その会社のことをシビアにみるわけです。
ちなみに個人単位の場合は、その人の収入などを見るケースがありますが、会社の場合は社長の収入などを見る事はあまりありません。社長の収入を見ても、実態はよくわからないからです。社長の年収が高かったとしても、かなり社長がその会社の社員に対してお金を与えておらず自分ばかりがとっている場合も考えられます。逆に、社長の年収が低くても、社員の給料が比較的高い場合などもあるわけです。これはその経営者によってで考え方が異なってくると言っても良いかもしれません。
経営の危険な兆候がないか、怪しい兆候がないか等を見るために行われる複数期比較
決算書を見る場合には、会社の実態がよくわかるようになります。そのため、その年の決算書を見ることも重要ですがそれだけではなく、例えば2年や3年の決算書を並べて比較をすることが重要になります。決算書の傾向を見るためには、複数年度を見る必要があることから、例えば前期と比べてどのように変化しているかを見ていくわけです。はっきりってその年のものだけを見たとしても、よく実態が分かりません。しかし前回のものと比べると、前期からどのように成長しているのかあるいは横ばいになっているのかさらには下落しているのかなどが分かりますので、このような比較をとても重要になります。
ちなみに比較をする場合他の会社と比較をするケースもありますが、借り入れの場合はそこまで比べる必要は無いかもしれません。この辺は金融機関によって対応の仕方が異なりますので、他の会社と比べるかどうかなどは金融機関の担当者に聞いてみると良いです。
前年度と比べて伸びているか、落ちているか
前年度と比べて伸びている場合は、今後も成長する可能性が考えられるわけです。もちろん、前年度から伸びていたとしても翌年には下がっている場合や前年度よりも大きく落ちてしまっている可能性があるかもしれません。この辺は100%正確では無いものの、ある程度伸びを見ると今後の展開もわかると言うものです。
これに対して、前年度と大して変わりがない場合もありますが、ある程度成熟している企業はこの状態になっているケースが多くなります。これが悪いと言うわけではなく、前年度を維持しているならば特に問題がないと考えて良いでしょう。この場合も融資が成功する可能性が高くなります。
問題となるのは、前年度と比較して悪くなっている場合です。この辺も、どの程度悪くなっているのかによって変わってくるかもしれません。極端に悪くなっている場合は当然会社としてもお金がないため融資を希望しているのであり、いい加減に扱うべきではないですが、あまりにも極端な場合には融資額をかなり少なくするかそもそも言う指ができないといった流れになるかもしれません。
在庫が適切かどうか?回転期間等もみられることがある
売上だけではなく、在庫が適切かなども見ることができます。在庫が適切かどうかは、一般的な指標として、売上高を在庫金額で割った在庫の回転期間等があります。資金繰りの相談をして出てくる担当者は、融資のプロです。お金を貸す審査のプロが見るわけですので、ごまかすことがなかなかできないでしょう。かといって粉飾決済等が行われていないかつまり粉飾がないか等も重要になってくるところですが、良心的な会社であればまずそのようなことをしないはずです。もし粉飾決済等があった場合には、その会社の信用が一気に失われてしまう可能性があるため、控えなければいけません。特に在庫の場合は、在庫として計上できないものを水増し計上しているケースがあるなどもあるため、在庫が膨らんでいると、理由をヒアリングされるケースもあります。
最後に
決算書は、一年分のデータのみだと傾向が正しくつかめないことも多いです。その会社が良い方向に向かっているのか悪い方向に向かっているのか、見極めるためにも決算書は複数期分を比較するのです。金融機関の担当者は、融資のプロです。プロは、決算書からあらゆるリスクや危険性を読み解くことに長けています。相談者である経営者としても、まったくの知識ゼロで取り組むのではなく、「経営のプロと対峙するんだ」という意気込みで、この程度の知識は押さえておくとよいと思います。
専門家等に相談して、決算書のチェックから、金融機関への同行なども依頼できるサービスもあります。普段、本業の仕事が忙しい経営者だからこそ、専門知識が必要な場面は専門家を頼ってみよう!