はじめに
「サラリーマンだけど、マイクロ法人って作れるのだろうか?」 「マイクロ法人を作ると節税効果があるってホント?」
この記事をご覧のあなたは、そんな疑問をお持ちかもしれません。マイクロ法人は、副業を行うサラリーマンにとって有益な選択肢となり得ますが、その仕組みやメリット、デメリットを正しく理解することが重要です。
今回は、マイクロ法人の概要から設立基準、さらにサラリーマンが設立する際のメリット・デメリットまでを詳しく解説いたします。
サラリーマンのマイクロ法人とは?
マイクロ法人(プライベートカンパニーとも呼ばれる)とは、意図的に小規模な運営を行う法人のことです。多くの場合、個人事業主が従業員1人で運営する形式が一般的です。
サラリーマンが副業を法人化することで、個人事業主よりも社会的信用が高まり、事業をより円滑に進めることができます。
マイクロ法人で節税できる理由
マイクロ法人を設立すると、一定条件下で節税効果が期待できます。その理由は、所得税率と法人税率の違いにあります。
所得税と法人税の税率比較
以下は、所得税と法人税の税率を比較した表です。
課税される所得金額 | 所得税率 | 法人税率(資本金1億円以下) |
---|---|---|
~330万円 | 20% | 15%(年800万円まで) |
330万円~694万円 | 20% | 23.20%(年800万円超) |
695万円~899万円 | 23% | 23.20% |
900万円~1799万円 | 33% | 23.20% |
所得が年間500万円を超える場合、法人税の方が有利となるケースが多く、法人化を検討する目安となります。
マイクロ法人設立の基準
マイクロ法人を設立するタイミングは、所得金額が年間500万円を超えたあたりが一般的な目安です。ただし、設立費用や維持費も発生するため、事前にシミュレーションを行うことが大切です。
サラリーマンがマイクロ法人を設立するメリット
1. 所得分散ができる
サラリーマンとしての給与と法人からの役員報酬を分散することで、税率の高い所得部分を抑え、節税につなげることが可能です。特に、高所得層の場合は累進課税により税率が高くなるため、所得を分散することで大きな節税効果が期待できます。また、配偶者を法人の役員にして役員報酬を支払うことで、さらに所得を分散し、世帯全体の税負担を抑えられる可能性があります。
2. 社会的信用がアップする
法人は登記や定款作成など、正式な設立手続きを経るため、金融機関や取引先からの信用が得られやすくなります。個人事業主に比べ、法人は資金調達がしやすく、事業用クレジットカードやビジネスローンの審査も通りやすくなります。また、法人名義で契約することにより、業務上の責任範囲を法人に限定できるため、リスク管理の面でも有利です。
3. 経費の範囲が広がる
法人の場合、事業関連の費用は経費として計上可能です。例えば、通信費や事務用品費、役員報酬、交際費、車両費などが経費となります。さらに、自宅を事務所として使用する場合は、家賃や光熱費の一部を経費として計上することができます。法人として会議費や出張費を計上することで、事業活動に必要な支出が節税につながります。
4. 小規模企業共済に加入できる
マイクロ法人を設立することで、小規模企業共済に加入する資格が得られ、将来的な退職金の積立が可能です。小規模企業共済は掛金が全額所得控除となるため、節税効果が高いだけでなく、将来的な資金繰りにも役立ちます。また、共済金は退職所得扱いとなり、受取時に大きな税制優遇を受けられる点も魅力です。
5. 赤字の繰越期間が長い
個人事業主の場合、赤字の繰越期間は3年ですが、法人の場合は最大10年間繰越が可能となり、将来的な税負担を軽減できます。特に創業初期は赤字になることが多いため、長期間の赤字繰越は資金計画を安定させ、将来的な利益と相殺して税金を抑える助けとなります。
サラリーマンがマイクロ法人を設立するデメリット
1. 社会保険の節税効果は期待できない
サラリーマンとしての社会保険は主たる勤務先で加入するため、マイクロ法人を設立しても社会保険料の節税効果はありません。さらに、法人の代表取締役として社会保険に加入する場合は、法人としても社会保険料を負担する必要があります。そのため、社会保険料のコストが二重に発生するリスクがあります。
2. 設立費用と維持費がかかる
法人設立時には、株式会社で約20万円、合同会社で約6万円の費用がかかります。さらに、毎年法人住民税(最低7万円)や決算申告費用などの維持費が必要です。特に、法人住民税は赤字でも必ず発生するため、維持費用は固定コストとなります。
3. 税務申告が煩雑になる
法人は個人事業主よりも税務申告の手続きが複雑です。決算書の作成や法人税、消費税、法人事業税など多様な税務処理が求められるため、税理士との契約が必要となることが多く、年間数万円から数十万円の費用が発生する可能性があります。また、定款変更や役員変更などの登記手続きにも費用と手間がかかります。
まとめ
サラリーマンがマイクロ法人を設立することは、所得分散による節税や将来的な資産形成、事業運営の幅を広げるなど多くのメリットをもたらします。一方で、設立費用や維持管理コスト、税務申告の煩雑さなどのデメリットも考慮する必要があります。
設立を検討する際は、事前に収支や節税効果をシミュレーションし、自身のライフプランやキャリアプランに合致しているかを十分に検討することが重要です。また、専門家に相談することで、より現実的で自分に合った運用計画を立てることができますので、気になる方はぜひ活用してみましょう。