はじめに
はじめまして。本記事では、会社を設立する際に必ず押さえておきたい「登録免許税」について、できるだけわかりやすく解説していきます。会社をはじめるとなると、資本金の準備や書類作成など、考えるべきことが数多くあり、税金の取り扱いもその一つです。しかし「登録免許税って何だろう」「どうやって計算すればいいのだろう」と、意外と詳細を把握していない方も多いかもしれません。
そこでこの記事では、登録免許税の概要から具体的な計算方法、支援制度を活用した減免措置、そして実際の納付方法にいたるまで、順を追って解説いたします。特に支援制度を利用することで、登録免許税を半額にできるケースもあるので、見逃せない情報となっています。これから会社設立を目指している方々が、少しでもお得に、そしてスムーズに手続きを進められるよう、お役に立てれば幸いです。
会社設立時に必要な「登録免許税」とは
会社を設立するときには、「設立登記」を行わなければなりません。実はこの登記手続きにともなって課税されるのが、登録免許税という国税です。ここでは、登録免許税の概要や、いつ・誰が支払うべきかを見ていきましょう。
登録免許税の概要
登録免許税とは、法務局で登記を行う際に課される国税です。会社を設立するときの「設立登記」、会社名や本店所在地などを変更する際の「変更登記」、あるいは不動産の名義変更など、法律にもとづいて登記・登録を行う場合に支払う必要があります。会社設立の場面では、いわば「登記のための手数料」のようなイメージです。
いつ、誰が納めるか
会社を新たにつくるときは、法務局に対して設立登記の申請を行います。このとき、申請人は「設立する会社自体」として扱われますが、実際の手続きはその会社を代表する人(代表取締役など)が進めることになります。つまり、設立登記の申請時点で代表者となる人が、登録免許税を納付する必要があるわけです。
仕訳の扱い
会社設立前の段階では、まだ法人格がない状態で各種の費用が発生します。これらは大きく「創業費」と「開業費」に分かれており、登録免許税は「創業費」に含まれます。具体的には、以下のように分類されることが一般的です。
- 創業費:会社設立準備を始めてから、設立登記が完了する前までにかかった費用
- 開業費:会社設立後、実際に事業をスタートするまでにかかる費用
登録免許税は設立登記と同時にかかるため、創業費として会計上は資産計上でき、後から償却などの処理を行うことが可能です。
課税額を計算する方法
登録免許税の金額は、会社形態や資本金額によって変動します。ここでは、「株式会社」と「合同会社」の2種類を取り上げ、実際の計算方法を見ていきましょう。
株式会社の場合
株式会社を設立する場合、資本金額を基準にして次のように課税額が決まります。
資本金額 | 登録免許税額 |
---|---|
2,143万円未満 | 15万円 |
2,143万円以上の場合 | 資本金額 × 0.7% |
- 計算例①:資本金1,000万円で会社を設立する場合
→ 登録免許税は一律15万円 - 計算例②:資本金2,300万円で会社を設立する場合
→ 登録免許税は「2,300万円 × 0.7%=16万1,000円」
会社を初めてつくる場面では、資本金をそこまで大きく設定しないことが多いため、15万円という基準だけは覚えておくと便利です。
合同会社の場合
合同会社を設立する場合も、同様に資本金額が課税額に影響します。ただし、株式会社とは基準額が異なるため注意しましょう。
資本金額 | 登録免許税額 |
---|---|
857万円未満 | 6万円 |
857万円以上の場合 | 資本金額 × 0.7% |
- 計算例①:資本金500万円で会社を設立する場合
→ 登録免許税は6万円 - 計算例②:資本金1,000万円で会社を設立する場合
→ 登録免許税は「1,000万円 × 0.7%=7万円」
資本金が857万円に満たない場合には一律6万円と覚えておけば、計算がスムーズになります。
創業支援を活用して登録免許税を半額に! ~特定創業支援事業~
上述のとおり、会社を設立するときには登録免許税がどうしてもかかってきますが、実は半額に抑えられる制度があります。それが「特定創業支援事業」です。ここでは、その概要と利用の手順、さらにはメリット・デメリットについて確認しておきましょう。
特定創業支援事業とは
特定創業支援事業は、「産業競争力強化法」に基づいて各自治体が実施している創業支援制度の一つです。民間の金融機関や商工会議所などと連携し、経営・財務・人材育成・販路開拓の知識を総合的に学べる継続的な講座・支援プログラムを提供しています。
下記のポイントを満たす市区町村であれば、この事業を行っている可能性が高いので、会社を設立しようと考えている自治体のウェブサイトをチェックするとよいでしょう。
- 国の認定を受けた自治体である
- 金融機関、商工会議所、信用組合などとの協力体制がある
- 創業に必要な複数分野(経営・財務など)についての支援を行う
なお、証明書を取得し、会社設立の際に登記申請書類とともに提出すると登録免許税が半額になるため、株式会社なら15万円→7万5,000円、合同会社なら6万円→3万円と、大幅に節税が可能です。
(出典:経済産業省HP「産業競争力強化法に基づく『創業支援等事業計画』の認定について」)
減免を受けるための基本的な手続き
特定創業支援事業による減免を受けるためには、自治体が指定する下記ステップを踏むことが一般的です。
- 一定期間以上のセミナー・講座・相談を受ける
1ヶ月以上にわたって講義や相談窓口を利用し、経営や財務、人材育成、販路開拓など、創業に必要な知識を総合的に身につけます。 - 証明書の交付申請をする
セミナーや相談を受け終わったら、自治体の窓口に証明書交付申請を行います。必要書類(申請書や同意書など)をそろえて提出すると、後日、自治体から「特定創業支援事業の支援を受けた」という証明書が発行されます。
発行された証明書を設立登記のときに添付すれば、登録免許税を半額に抑えることができるという流れです。自治体によっては名称が少し異なる場合もあるので、事前に問い合わせてみるのがおすすめです。
利用のメリット・デメリット
特定創業支援事業は、登録免許税の減免以外にも役立つメリットがある反面、いくつかのデメリットも存在します。自治体ごとに詳細が異なるため、ここでは一般的によく挙げられる項目を見ていきましょう。
- メリット
- 金融機関からの融資を受けやすくなる優遇措置
一定の条件を満たすと、公的金融機関での金利が優遇されたり、申請可能な時期が早まったりするケースがあります。 - 創業期に必要なノウハウを体系的に学べる
経営や財務など広範囲にわたる知識を学べるため、創業初期のリスクを低減し、事業を軌道に乗せやすくなります。
- 金融機関からの融資を受けやすくなる優遇措置
- デメリット
- 開業までに時間がかかる
原則として1ヶ月以上の学習期間が必要となるため、証明書を取得するまでに想定よりも日数がかかる場合があります。あらかじめスケジュールに余裕を持って取り組む必要があります。 - 自治体によって内容や手続きが異なる
どの講座を受講すればよいのか、どの資料を提出すべきかなどは自治体ごとに異なります。事前に必ず管轄の自治体に問い合わせましょう。
- 開業までに時間がかかる
登録免許税の納付方法
登録免許税の納付には、主に「収入印紙による納付」と「現金納付」の2パターンがあります。どちらも法務局に対して正しく手続きを行えば問題ありませんが、手順が異なるため、自分に合った方法を選ぶとよいでしょう。
収入印紙による納付
- 印紙貼用台紙に収入印紙を貼り付ける
登録免許税額と同額の収入印紙を購入し、印紙貼用台紙に貼り付けます。台紙としての用紙に特に指定はないため、A4コピー用紙などを使用しても問題ありません。 - 登記申請書とホチキスで留め、契印する
印紙貼用台紙と登記申請書をホチキスでとめ、契印を行います。これにより、複数枚の書類が一つの文書として扱われることになります。 - 法務局へ提出する
書類に不備がなければ、法務局に申請することで納付完了です。
現金での納付
- 指定の銀行口座へ振り込む
法務局から案内された指定口座に、登録免許税相当額を振り込みます。 - 領収書と控えを印紙貼用台紙に貼り付ける
振り込み時に発行される領収書と、切り離さずに保持している領収書控えを、印紙貼用台紙に貼り付けます。 - 登記申請書とホチキスで留めて契印し、提出する
収入印紙の場合と同様に登記申請書類とまとめてホチキス留めを行い、法務局に提出することで手続きが完了します。
どちらの方法でも最終的な目的は「登録免許税を納めた証拠を法務局に提出する」ことです。申請時に提出する書類の形が収入印紙か現金納付の証明か、という点だけが異なっています。
まとめ
本記事では、会社設立時に必要となる登録免許税について、概要や課税額の計算方法、支援制度を活用した減免方法、さらに実際の納付手段を紹介してきました。以下のポイントを押さえておくことで、よりスムーズかつお得に会社設立の手続きを進められます。
- 登録免許税は会社形態(株式会社・合同会社)や資本金額に応じて計算される
- 特定創業支援事業を利用すると、登録免許税を半額にできる場合がある
- 減免措置以外にも融資や保証などの優遇を受けられるメリットもある
- 登録免許税の納付方法には「収入印紙」と「現金納付」の2通りがあり、どちらを選んでも問題ない
会社設立には法人印鑑の作成や定款認証など、多岐にわたる準備が必要です。なかでも税金の制度は複雑に感じる部分もあるため、事前の情報収集が非常に大切になります。もし不明な点や疑問点があれば、自治体の窓口や専門家に相談するのもよい方法です。しっかりと調べて計画的に進め、納める税金をできるだけ軽減できるよう、ぜひ本記事の内容を参考にしていただければ幸いです。
出典:経済産業省 「産業競争力強化法に基づく『創業支援等事業計画』」