会社の状態をつかむことは、株の取り引きをするうえで欠かせません。そのためにはいろいろな指標や数値を見て比較し、会社の状態をつかもうとすることが多いはず。実際に会社について詳しく見ていくことができれば状況もつかみやすいですが、単なる投資先としてみていく場合にそこまでする人はいないでしょう。やはり、数値化された指標があればそこから検討を進めていくことになります。
株主向けの分析指標は会社比較に使える?
株主向けの分析指標は数多くあります。それぞれ特徴があり、どの会社も同じように算出されることになるので比較しやすくなり、状態を判断していくうえで重要なものとなってきます。しかし、すべてきちんと比較できるのかどうかというと、そうは言えない場合もあります。特に大企業と中小企業では会社の規模も違うため、その違いによって数値の示す意味も変わってくることがあるのです。そのため、単純に数字を比較するだけでは状態がつかめないことも多くなってきます。
同じような規模の会社であれば数値で比較する意味があるかもしれませんが、そもそも立ち位置や目指すところが全く違う企業同士を同じ市場で比べることは難しいことです。特に大企業と中小企業では大きな差があり、そこから単なる数値の比較では参考にならない部分も出てきてしまいます。検討していく際にはその点についてしっかり認識しておくことが必要になってきます。
なぜ数値の比較が参考にならないの?
指標①ROE
具体的にどのような違いが出てくるのかを見ていきましょう。よく目にする指標の一つとしてROE(自己資本利益率)というものがあります。当期純利益÷自己資本で算出されるものですが、自己資本は株主が出資した金額になりますから、上場企業を対象とした指標であるともいえます。中小企業ではそもそも株の価格はあってないようなものですから、自己資本額もあてにはしづらくなります。大企業の場合には株式公開をしていることも多く、株主にどれだけの利益が還元されるかを測る重要な指標となりますが、中小企業の場合にはそうは言えないこともあるのです。そのためこれだけで会社の状態を比較することは難しく、これだけで判断することは危険です。どの様に出された数字なのか、それにどのような意味があるのかをつかんでいくことで、きちんとした比較をすることが可能となるでしょう。
指標②財務レバレッジ
また、財務レバレッジという指標もあり、投資をするうえでチェックする方も多いでしょう。総資本÷自己資本で算出されるもので、資本のうちどれぐらい借金をしているのかを表すものです。大企業の場合には投資をしていることも多く、それを借金で賄っている場合もあります。大きく利益が出せる投資や、新しい分野への進出などへ使うのであれば、大きな規模での借金が大きな利益を生むことになり、株主側にプラスになることもあるので重視されます。しかし、中小企業ではそういったことはあまり意味を持ちません。規模からしてそれほど大きな利益を出せる投資ができるわけではないはずです。単に借金が多く経営に問題が起きやすい状態かもしれないのです。このように規模の違いから数字の意味が大きく変わってしまうことも珍しくありません。もちろん一つの判断基準にはなるかもしれませんが、単純に数値を比較すればよいものではないでしょう。
参考にすることができる指標は?
中小企業でも比較的参考になりやすい指標は企業価値評価法のひとつ、DCF法があります。企業の将来生み出す利益などを踏まえて算出されるもので、企業の将来価値を判断する上で重要なものとなるので、企業の売却などの際に利用されることがあります。これはある程度中小企業でも実情が反映される部分があるので、参考になりやすいでしょう。
分析指標を見るときに注意するべき点は?
株主向けの分析指標は、確かに比較する上でわかりやすくて便利なものではあります。ある基準で一気に比較していくことで、短時間で投資先の候補をピックアップすることもできるはずです。よく知らない会社であればやはりデータから検討していくしかないこともあるでしょう。しかし、これまであげてきたように、会社の規模や事情などによってはあまり意味を持たない指標も出てきてしまいます。単に数値の比較だけをしていては本質を見誤ってしまうこともあるのです。
分析指標は単に良い方向にあるのかどうかを見るだけではなく、会社規模などについても意識しながら、どういった意味がある数字なのかを考えつつ見ていくことが大切です。どこに力を入れてみていくのかを自分で判断できれば、たくさんある分析指標も大いに役立つことになるでしょう。そのためには一つ一つの数字の意味をきちんと理解していくことが大切です。同じ数字でも意味しているところが異なる場合もあります。特に中小企業を中心に見る場合には、大企業と同じような判断をするのではなく、中小企業ならではの特性などを考えながら検討していくことが重要です。