中小企業が資金を調達する上で必ず課題になってくる「資金繰り」。資金繰りの際には、決算書類の提出がつきものですが、その際に銀行員がどこをどのようなポイントで見ているか、お話していきます。
銀行などの金融機関から資金調達を行うとなった場合には、これまで何も経験がなく、知識を得るわけでなく、なんとなく進めていくと、失敗してしまうことも多いものです。資金調達を行う前には、金融機関に対し幅広い知識を持ち、スキルも必要です。
融資審査の際には、決算書はしっかりとチェックしている人が多いかもしれませんが、勘定科目内訳書はそれほど気にしていないと言う人がいるかもしれません。実は融資の審査において、銀行は決算書だけではなく、それ以上にこの官邸科目内訳書の確認を行っているのです。
それはなぜなのかと言うと、銀行員は決算書のそれぞれの数値を知りたいわけではなく、取引の詳細を知りたいと思っているからです。
そもそも勘定科目内訳書って何?
そもそも勘定科目内訳書とはどのようなものなのかと言うと、それぞれの勘定科目の内訳を記した書類のことを指しています。決算書類の1つでもあり、確定申告の際に必要であったり、金融機関から融資を受ける際にも提出を求められることになります。なぜこの勘定科目内訳書を重視するのかと言うと、取引の実態を知るためです。融資の審査においては、賃貸対照表、損益計算書等を入念にチェックすると思っている人も多いかもしれませんが、それ以上に勘定科目内訳書を隅から隅まで見ているのです。決算書だけでは取引の実態を把握することができず、その結果発生した売掛金がわからないのです。このようなことから取引の詳細を知るために、勘定科目内訳書を見る必要があります。
銀行員は勘定科目内訳明細書の中のどのようなポイントを見ているか?
この勘定科目内訳書を確認するにあたり、銀行員はどのようなポイントをチェックしているのかをしっかりと把握しておくことが求められます。
①「信頼できる取引をしているかどうか」
銀行員はなぜ、融資の際に決算書類を細かく確認するのでしょうか?それは、
つまり、どのような企業と、取引をしていて、その取引先は本当に信用できるのか、取引内容に問題は無いのか
などを確認しているのです。取引内容を正しく記載されているかどうかはもちろんですが、融資を受けやすい勘定科目内訳書の作成が求められます。勘定科目内訳明細書では、売掛金や買掛金等、特定の勘定科目を紐づけて登録されている仕訳を、例えば取引先別等の単位で集計しなおした数字がまとめられています。取引先別の売掛金の残高などが、ぱっとみてわかる特徴があります。ここを見ると、当然どのような会社と取引があるのかがわかるようになっています。そのような資料を活用しながら、その企業が信頼できうる会社であるか、というのを見極めていくのです。
取引先企業の事業の規模はどれぐらいなのか、品質管理の厳しさはどれぐらいなのかを見ることで、有事に来た企業自体の信頼性を判断することにもつながります。大手で品質管理の厳しい企業と取引をしていなければ、それだけ技術力や営業力など、企業に必要と企業に必要となる力があると判断されて、これが大きな信用にもつながるでしょう。
②信頼されている金融機関から融資を受けているか
そしてどのような金融機関から融資を受けているかと言う点です。
金融機関と一言で言っても、比較的審査が厳しい銀行もあれば、審査が緩いところもあります。厳しい審査が行われているところから融資を受けている場合には、それだけでも企業の信頼性は上がることでしょう。例えばメインバンク等との取引があるなどはわかりやすく、銀行員受けもよいものです。
③融資の残高の推移が、年々減っているか
そして3つ目にはメインバンクの融資残高推移についてです。預金を残したまま融資残高を年々減らしているようであれば、かなり注意が必要です。過去3年間で残高を並べてみて融資が減っていれば、
「企業側に問題があって、金融機関から融資を控えられている」
などと疑われてしまう可能性があります。金利の条件が良いなどの理由で金融機関から融資を受けていることもあるかもしれませんが、メインバンクの融資残高推移については、十分に注意を払っておく必要があるでしょう。
そして受取手形、売掛金の内訳においては、本当に回収できる取引であるかどうかを確認します。過去3年にわたり、同一の借入先、取引先に同一金額で売掛金が残っていれば、回収できない不良債権と考えられてしまいます。このようなことから、融資を希望するならできる限り早い段階で売掛金を回収する、もしくは正しい勘定科目であらかじめ処理することが大切です。
④仮払金や貸付金等があるか
仕訳の勘定科目として知られる仮払金や貸付金等は、実は金融機関からすると企業の信頼が落ちやすい項目であるため、資金融資の際には十分な注意が必要な勘定科目でもあるのです。特に貸付金に記載があった場合には、様々な疑問を持つことにもなります。
「銀行に融資審査に来ているのにもかかわらず他社に貸し付ける余裕がある、なぜサービスや商品を売っている会社が貸付をしているのか?」など疑念を持たれます。
今後融資を希望するのであれば、貸付金の項目は使わないイメージを持つことが大切です。仮払金も売掛金と同じように、過去3年にわたって同じ企業に同じ金額があれば、回収できていないと判断されてしまいます。
⑤金利が何パーセントか
そして最後に金利は何パーセントかと言う点についてです。借入金の平均残高を確認した上で、何%の金利条件になっているのかを確認することが重要になってきます。銀行融資の金利においては、企業の財務内容、つまりは信用状況によって大きく変化が見られるため、過去に1%を切っていたのにもかかわらず、最近では1%を上回っているようであれば、銀行側にとってはかなりの不安要素となります。低金利であり、なおかつ変動のない状況が理想的です。
資金調達においては金融機関に対し幅広い知識、スキルが必要であり、成功するためには一定のノウハウを欠かすことができません。また、「銀行員がどのような視点を持っているか、どこを気にしてみているか」等、融資の審査をする側の人間を想像して、しっかりと対策することをおすすめします。